線維筋痛症 |
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〈症状〉
全身の耐え難い痛み。体の広範囲な痛み。筋肉痛、鈍痛、ツッパリ感といったものから、ズキズキする痛み、しびれ、異感覚など。押さえれば痛みを感じますが、押さえなくても痛みを持っていることも特徴の一つです。
全身疲労、睡眠障害、ストレス、うつ、感覚過敏、めまい、むくみなど、様々な症状を呈する。
画像診断や血液検査などでは問題はみられず(一部、血液検査で数値の異常が出る場合があるが、それがあるからといって、確定診断になるわけではない)、初診で確定するのは困難である。アメリカのリウマチ学会が提唱している、線維筋痛症の診断基準は、18か所の圧痛点を圧迫したときに11か所以上で痛みがあり、尚且つ、3カ月以上痛みが続いていることが診断基準とされています。
筋肉が硬くなっていると訴えられるので、患部を触るが、硬くないことも多い。痛みが慢性化しているので、少しの刺激でも、大きな刺激として感じる。少しの疲労でも、
大きな疲労として感じる。
難しいところは、似たような症状を呈する疾患が沢山あるということ。脊椎関節炎、慢性疲労症候群、膠原病、脳脊髄液減少症、CRPSなど。
〈原因〉
患者さんによって原因は様々。
手術がきっかけ
交通事故がきっかけ
出産がきっかっけ
肉体的な大きな苦痛を経験する。これだけで発症する人もいれば、精神的ショックによってなるかたもいます。
離婚、家庭内暴力、職場の人間関係、家族の死別、ペットの死別、医療機関でかけられた不適切な言葉、家族の無理解など。
肉体的苦痛と精神的苦痛が合わさって発症しているケースが多いように感じます。
人間に備わっている痛みを抑える鎮痛機構の障害といわれていますが、明確な原因はわかっていません。
局所に刺激が加わると、その刺激量によって、脳が痛みと認識します。
脳は、痛みを抑えよう、取り除こうとするので、脳内に痛みを抑制する物質を分泌したり、過剰な刺激量にならないように、刺激量を抑えたリします。また、局所にも痛みを抑える分泌物を放出したり、組織を修復する機構が働いたりします。
線維筋痛症になると、何らかの理由で、こ痛みを抑制、取り除く機構が働かなくなり、常に痛みを感じたり、少しの刺激で痛みを感じるようになります。
〈施術〉
通常の痛み止めが効かないことが多く、痛みを抑制する分泌物を補う薬を服用します。抗うつ薬や抗てんかん薬など。
なぜこういった薬を用いるかというと、気分を上げる薬に含まれる成分が、痛みを抑制する分泌物と同じ成分であるために、これらを処方されるようになっています。
鍼灸刺激は、脳内から痛みを抑制する分泌物の分泌を促すことがわかっています。全身の鎮痛をはかるのと同時に、局所の筋肉の緊張緩和を行います。また、お灸の熱感を加えてのリラックスしてもらうことにより、過敏になった精神のっ抑制を行います。
長年痛みがあり、常に痛い、ツライ、しんどいと思っている、感じていると、それらの刺激が脳に深くインプットされます。実際に傷がつくわけではありませんが、深く傷が刻まれます。そうすると、脳が常に痛みを覚えてしまったり、少しの刺激で痛みを感じてしまうという悪循環に陥ります。動きたくても痛くて動けない、外に出たくても痛くて出れない。
鍼灸では、この悪循環を好循環に変えられるように、いい状態を体感してもらう、感じてもらう、実感してもらう、動ける、使える、立てる。こういったことがほんの一瞬でも、短時間でも構いません、これらをどんどん体験、経験してもらって、本人だっけでなく脳にも、楽な状態、いい状態を覚えてもらう、あるいはいい刺激を脳に刻む、つらい痛みを忘れてもらう、こういった作業を繰り返すことになります。
そのため、時間を要しますし、肉体的だけでなく精神的なリラックス、安定、良質な睡眠、運動なども同時にやっていく必要があります。受け身の施術だけでなく、自分でアクションを起こすことが、体だけでなく脳にとっても、プラスの効果をもたらします。
鍼灸の施術にセルフケアを組み合わせて、好循環に換えていくようにします。
=筋肉=
どの筋肉にこだわりません。症状や圧痛部位、全てです
=経穴(ツボ)=
局所のツボだけでなく、背部のツボが重要です。
ワンポイント!体重のコントロールが重要
その時々で症状が違います。一つの治療に拘ると、悪化したり、偏った治療や施術になる恐れがあります。薬、注射、病院、鍼灸、マッサージなど、その時々によって治療や施術を併用することをおススメします。
ワンポイント!甘いことばに惑わされない!
何か一つの治療、薬、整体などで、症状が激変するものではありません。根気のいる病気です。コツコツ少しづつ変化が出たり、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
一発で治る!
これをしたら必ず治る!
こんな甘い言葉に惑わされないようにしましょう。確かな医療、適切な情報を提供してくれる、病院、治療所、鍼灸院であれば、こういったことは言いません。ご注意ください。
ワンポイント!セルフケアを行う!
痛みがあり、精神的にも参っているので、自分で何かやろうという風には、なかなかなりません。痛みがひどい時に無理にやる必要がありませんが、受け身の治療ばかりになっていると、自分で体を治していこう、脳に鎮痛を促すといった機能が弱くなります。こういったことを強化するには、自分で何かすることが大きな効果を発揮します。慌てずゆっくりと行いましょう。
具体的には、ストレッチ、ヨガ、半身浴、ウォーキング、お灸、体操など。
詳しくは、こちらをダウンロードしてください。
「慢性疼痛のためのセルフケアガイドブック」
〈予防〉
一度こういった症状が出ると、完治するということは難しくなります。
しかし、痛みのない、いい状態をキープすることは可能です。
一般の方でも、疲れた時、寝不足の時、忙しいとき、ストレスを感じたときに、体調が悪くなります。それと同じで、線維筋痛症になった方も、同様の時に症状が出る時があります。それは一般の方と同じで、しっかりと疲れをとれば、睡眠をとれば良くなってきます。
そういったことをコントロールしておけば、以前のようなひどい痛みになることもありません。
1、睡眠
2、しっかりと食事
3、運動
4、リラックス
5、セルフケア
これらをしっかりとやっていただければ、いい状態をキープできます。また、これらをやることがストレスになるようであれば、量を減らしたり、時間を調整すればいい話です。
ご自身の楽しいこと、心地いいこと、リラックスできることを沢山していただくことが何よりです。
質問・疑問・気になること。
薬を飲み続けることに不安を感じます。薬はやめたほうがいいですか?
痛みの度合いによります。耐え難い痛みの場合、症状がピークでつらい場合は、薬による痛みのコントロールが必要です。
ただ、何年も飲み続けていると、体が薬に頼ってしまいます。本来自分の脳から分泌される鎮痛物質などが出にくくなります。症状が落ち着いてきたら、薬を減らし、セルフケアを組み合わせて、無くてもいい状態にもっていくことがいいでしょう。
医師や薬剤師、治療者と相談しながら、コントロールしていたくことをおススメします。
鍼治療が怖いです。
鍼治療を受ける前は、痛みがあるのに、針を刺したら、さらに痛くなるんじゃないかと思われるかもしれません。鍼治療は、医師による日本線維筋痛症学会で、治療推奨度レベルBの治療です。薬などの推奨度と同レベルの治療ですので、薬と合わせて併用していただき、効果を実感していただければと思います。
どこに行ったらいいかわからない
病院、整体、整骨院、カイロ、鍼灸院、マッサージ、指圧etc...。
繊維筋痛症を知らなかったり、理解のないところもあります。そういったところに行って、つらい経験をすることもあります。それにより、症状がひどくなることもあります。
病院を受診しないで、線維筋痛症と確定するのは危険です。必ず受診するようにしましょう。
治療経験がある医療機関
大変とは思いますが、事前に問い合わせていただくことをおすすめします。
痛みが長引く場合
この病気は、症状がよくなるのに時間がかかります。治療者も根気がいります。焦らずじっくり治療しましょう。