自律神経症状 |
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ふらつき、息苦しさ、体温調節障害、だるさなど |
症例1
30代 女性 会社員 2017年2月受診
1週間前から、ふらつきを感じるようになる。内科、婦人科を受診するも特に異常は見当たらない。薬を処方されるも変化が見られないので、当院を受診。
主訴
ふらつき、気持ち悪さ。
その他症状
左臀部痛。
既往歴
特になし。
所見
睡眠 問題なし
寝位でのめまい、ふらつきなし
食欲低下
生理痛 腹部にあり
頭全体が重たい
熱なし
顔面蒼白
二便 問題なし
下肢の冷え
頸部の緊張が強い
ツボ、筋肉
頸部夾脊穴、天柱、風池、完骨、百会、四神聡、背部夾脊穴。頸板状筋、頭板状筋、棘筋、後頭下筋群、頭頂筋、胸鎖乳突筋。
施術
1回目の施術
頸部の緊張をとるのと、全身をリラックスできるように、頸部背部に施術を行いました。脳に血液を送る椎骨動脈の血流改善を意識し、それらの部位に注意深く刺鍼しています。
2回目の施術
1回目の施術後から、スッキリ感があったが、次の日に犬の散歩に行き、症状が再発。手足がしびれたり、動悸がしたりする。
前回と同じように施術を行う。
3回目の施術
2回目の施術で、スカッとしとのこと。施術後に食欲が出て御飯を美味しく食べれたとおっしゃっていました。ふらつきが少しあるが、前回までのようなひどさはない。頸部が動きやすくなり、ゴキゴキと音が鳴るようになったとのこと。
顔色の変化があり、手足も温かくなってきているので、これで様子をみてもらうことにしました。
考察
疲れを感じていたり、寝不足であったり、ストレスを感じるということは、特になかったようです。
30代後半は、様々な衰えが見え隠れする時期です。
一見元気で体力はあるのですが、今まで出ていたホルモン量に変化が出たり、体力が自分の想像以上に落ちていたりすることによって、今までの調整でうまくいっていたものがうまくいかなくなったのかもしれません。
また、頸部の緊張が強く、頭部にいく血流が低下し、脳への血流量低下がみられたため、ちょっとした貧血状態になっていたとも考えれます。顔面が蒼白で手足が冷えていたのは、そういったところから影響していたのではないでしょうか。
一度そういう不調が出ると、治るの?いつまで続くの?重病?と不安になり、さらに緊張が高まります。そうすると、全身の筋肉は緊張し、もともと負担の強い頸部は、さらに緊張が強くなります。
また、頸部には迷走神経という神経がでています。この神経は、心臓や胃腸、血管、などの全身に分布しているので、頸部の緊張により迷走神経を刺激して、血管拡張が起こり、血圧低下、脳貧血を招く迷走神経反射というものがあります。急なものでなくとも、こういった影響があったのではないかと考えられます。
今回、頸部の緊張を重点的に取る、頭部だけでなく全身の血流量を改善する、適度な鍼刺激で一時的に交感神経優位にし、血管の収縮を図る。鍼の置鍼を30分以上行い、赤外線お灸をプラスして熱感を加え、リラックスしてもらう。
これらにより、症状の改善をはかりました。これらは、鍼灸では特別な施術ではありません。他の治療院でもできるものです。お困りの際は近所の鍼灸専門の治療院でご相談していただければと思います。
症例2
50代 男性 自営業 2021年8月受診
去年、副鼻腔(鼻中隔)の手術を受ける。術後、息がしづらい、息苦しさを感じるようになる。息苦しさのため、寝入りが悪く、睡眠するも途中で目が覚める。
主訴
息苦しさ、唾の飲み込みにくさ、耳鳴り
その他症状
逆流性食道炎、頸部のコリ、不安症
既往歴
40代、不安神経症(薬の副作用で倒れる)
20年前、鼻中隔の手術
所見
耳鼻咽喉科での検査で異常なし
右頸部のコリ
右下顎骨下部の顎ニ腹筋を圧迫すると、耳鳴りの音(キーン)がひどくなる
喉の腫れなし
噛み締め、食いしばり有り
ツボ、筋肉
頸部夾脊穴、天柱、風池、完骨、百会、四神聡、背部夾脊穴。頸板状筋、頭板状筋、棘筋、後頭下筋群、頭頂筋、胸鎖乳突筋。
施術
1回目の施術
仰向けで、上頸神経節刺鍼、胸鎖乳突筋、斜角筋の刺鍼を行う
呼吸をしやすくなるように、横隔膜への刺鍼を追加する
2回目の施術
1回目の施術後の当日は、息苦しさが楽になり、睡眠がとれるようになるが、翌日以降は同じような症状になる
頸部のコリを強く感じていたため、頸部周りの緊張を取るべく、後頭下筋群、最長筋、板状筋などの刺鍼を行う
3回目の施術
大きな変化を感じず、息苦しさ、耳鳴り、飲み込みにくさを感じる、
後頭下部、頸部筋肉の刺鍼だけでなく、顎の筋肉、側頭筋、咬筋、翼突筋の刺鍼を行う
考察
20年以上前から、耳鳴りがあり、細かなことが気になるなど、ストレスを感じやすい性格である。不安神経症もあることから、精神的、肉体的に常に緊張している状態と考えられる。術後に症状が出るようになるが、仕事や家庭でのストレスに、手術というストレスが加わり、不安神経症の肉体的な随伴症状が強くなっていると考えられる。
仕事や日々の真面目さ、完璧主義、過敏な点などについて、少しでも肉体的な不快感への意識を外に向けてもらえるようなお話をさせていただきました。
ただ、肉体的な不調が大きく変化が出なかったため、施術が継続できなかったと考えられます。
こういった精神的な症状を伴った場合、施術の効果が大きく出ないことが多いです。自分の不甲斐なさを感じる1例です。息苦しさに焦点を絞るか、耳鳴りに焦点を絞るか、どちらにするかを決めてやっていてもよかったかなと感じます。